プロケア歯科クリニック すすきの 菊水近く
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あなたに伝えたい


博和会 ドクターによる「あなたに伝えたい」メッセージ集です。順次公開予定です。



私が初めて自分の診療室で取り入れたのは…十九年前…。
それよりももっと前のこと、学生時代から天然の歯を削る治療
に疑問を感じた時期もありました。
が…おりしも技術革新めざましい時代。飛行機のエンジンと
同じ原理で、振動もなくあっという間に歯を削ってしまう機械の
出現に、神様から賜りし天然の歯を何のためらいもなくまる裸に
することに罪悪感すら感じなかった時代…。
例えば、歯が一本抜けると患者さまに平気で「両隣の健康な歯を
削ってブリッジにします」と当たり前のようにお話していました。

歯を削られることに違和感をおぼえ、ブリッジに同意いただけない
患者さまには、両隣の歯にバネをかけた取り外し式の入れ歯を何の
説明もなく押し付けていました。
清掃など取り扱いの煩雑さ・見かけや装着感の悪さ・噛み心地の
悪さなどはお構いなしに…「入れ歯では仕方ないですね」の
常套句をもって…。

またブリッジをかける歯がない場合や残っている歯が少ない場合も
ただ噛む機能最優先で入れ歯を押し付けていました。
何のためらいもなく…。


でも私は間違ったことをしているという意識はまったくありませんでした。むしろその患者さまの 意志を尊重し、ベストな選択をしていると自負していました。 そんなころ知ったインプラント、最初は元来の新しもの好きの好奇心からでした。 セミナーに行って影響を受け、「これからは他の医院との差別化のためうちの武器にしよう」と 勇んで道具を揃え、実験台の患者さまを探しました。


当時のインプラントオペ


インプラント

当時三十代半ばの健康を絵に描いたような男性、
右下あごの奥歯三本が抜けていました。
にわかインプラントロジスト(インプラント専門医)の 私としてはやっと恋人と巡り合ったような気がしました。
汗だくのオペの末、何とか2本のインプラントを埋め 込みました。

その後一~二年の間に五~六人の患者さまにトライしましたが、
ほとんどが五年以内に脱落してしまいました。

もちろんそのころのインプラントと現在のものとでは開発され たコンセプトも材質も全く別のものです。
そんな訳で自分の技術を棚に上げ(オペはうまくいったのに…と思いつつ)成功率の低さからだんだん
インプラントから遠のいていったのです。。


天然の歯に匹敵する人口の歯、インプラント

それから数年たった平成三年ころ、開発コンセプトや材質もまったく新しいタイプのインプラントの 出現に、またまた新しもの好きの好奇心がうずきだしました。 これが現在世界の主流となっているオッセオインテグレーション・インプラントというものです。 早速札幌はもとより東京・大阪、アメリカへまでセミナーに出かけ、真の意味での私のインプラント 人生が始まりました。 当時でも一本二十~三十万円のインプラント治療を受け入れてくれる患者さまなどそうはいないと 思いつつも自分の診療室でやってみたいという気持ちは日に日に増していきました。 そんなとき大阪のあるセミナーでの講師の先生の言葉に背中を押され、意を強くした思いでした。 「最初の患者さまを見つけるのはそう難しくはありません。先生が本当にその患者さまのためになる という気持ちでお話すればきっと患者さまの心を動かすことが出来るはずです。」 講師の先生の言葉通り、意外と早く最初の患者さまとめぐり合うことが出来ました。 最初のオペは、以前のオペの経験がものをいい、成功裏に終わりました。 その時の充実した気持ちは今でもはっきりと覚えています。 その後の数年間で何例かを経験し、 「これこそ神様が与えてくれた天然の歯に匹敵する真の人工の歯だ!」 と思うようになりました。 最近ではインプラントに対する私の考え方はやや変わってきてはいますが、インプラントそのものに ついての安全性・有効性についてはまったく変わってはいないどころか、将来においても インプラント治療は非常に有効な選択肢であると思っています。


先生、私、インプラントをしていただきたいのです


インプラント患者さま

平成六年の春、ある女性の患者さまが来院されました。
年齢は四十歳代前半、服装・物腰といいその品の良さから
良家の奥様という感じでした。

驚いたことに彼女は私の顔を見るなり、「先生、私、インプ
ラントをしていただきたいのです」とおっしゃったのです。
最近では一般の方でもインプラントをご存知の方が多いと思い ますが、当時は巷でこの言葉を聞くことはほとんどありません でした。


しかもご自分からインプラント治療を望んでこられる方は現在でも多くはありません。 今のようにインターネットもない時代、十分な情報も得られなかったはずなのに…なぜ? その理由…私なりの解釈は後で述べることにします。 お口の中を拝見させていただいた結果、埋入部位の状態・埋入本数等を考えると当時の私にとっては 易しいオペではないと思いました。 でもぜひやってみたいと思い承諾しました。その時の私は彼女の心の内側を考える 余裕などありませんでした。 ただ単に「入れ歯にしたくないんだな」くらいに考えていました。 いよいよ彼女のオペの日、私はいつもよりも緊張していました。 そんなに易しいオペではないということもありましたが、これまで相当数の経験があり自信は ありました。緊張?…それは彼女のオペに臨む姿を見て私が何かを感じたからでした。 オペは無事終わりました。 何のトラブルもなく…いつも通りに…そうなるだろうと思っていた通りに…。 いつもなら最後の縫合を終えてマスク越しに「○○さん、お疲れさまでした、終りましたよ」と 冷静に話しかけるところです。 でもその時私は彼女にオペの終りを告げる前に「完ぺき!」と叫んでいました。 それはもちろん私にとっては難しいオペがうまくいったからでもありました。 少なくとも彼女を含め、周りのスタッフもそれ以外の理由は思いつかなかったでしょう。 でも本当の理由…それは…その時は私にも解りませんでした。


13年以上ほとんど変化なしー定期健診

さっぽろプロケア歯科クリニックではインプラントの患者さまには半年に一度の定期健診の ご案内をしています。 この患者さまは現在でも時々来院され、インプラントのチェックをさせていただいておりますが、 レントゲン所見でも十三年前と現在とではほとんど変化が見られません。 もちろんそれは彼女の日常のメンテナンスに負うところが大きいことは当然のことです。 現在私は彼女を含め、インプラント施術後十年以上経過した数名の患者さまの経過を見させて いただいております。 たった数名ですが、私は確信しています。 「インプラントは十年は確実にもつ!」と…。 もちろん定期的メンテナンスをしていれば…ですが。 したがって、さっっぽろプロケア歯科クリニックでは半年ごとの定期健診の義務化をもって 施術後十年間を保証期間としています。 現在では、歯の欠損を補う方法として私はインプラントをセカンドチョイス(第二番目の選択肢)と 位置づけています。 ファーストチョイス(第一番目)は歯の自家移植です。 自家移植とは、自分の歯で機能していない歯(親知らずや転位歯)を抜けた部分に植える技術です。 したがって移植する歯がない場合や移植する場所と歯のサイズが合わない場合はできません。 ブリッジや入れ歯はもはや時代遅れの方法だと思っています。


「完ぺき!」の理由


インプラント 患者さま

さて先ほどの患者さまの話に戻りましょう。
十三年前まだインプラントがそれほど普及していなかった頃、
なぜ彼女はインプラント治療を望んだのでしょうか?
なぜ私は彼女のオペにあんなに緊張したのでしょうか?

そしてオペ後、「完ぺき!」と叫んでしまった理由は?…

私は最近になってようやくその答えが解ったような気がします。

彼女は好きなものを自分の歯で噛むように食べたかったのでしょうか? 笑った時に歯が抜けているのを他人に知られるのが嫌だったのでしょうか? 入れ歯のバネが見えるのが嫌だったのでしょうか? まだあまり一般的ではなかった不安いっぱいのオペに彼女を奮い立たせた理由は?… これらの何れでもないと私は今、感じています。 それは彼女の心の内側に潜む『美学』とでも言うべきものでは?と思うのです。 きっと彼女は女性であるが故、常に『美』を求めていたのではないのか?… それも外見上の美しさばかりではなく内面からあふれる美しさ、他人の目を意識しない美しさ、 自分が健康であるという美しさ、うぬぼれではなくたとえ誰が認めなくても自分が美しいと思う心…。 そう思うと奥歯が抜けている自分が許せない…そんな気持ちになったのでは?と推察します。 そして私がオペに緊張したのは、きっと彼女はインプラントの機能だけを 求めているのではないと感じたから…。 叫んでしまったのは彼女の期待にきっと応えられると確信したから…。 これは私の推測です。もちろん彼女に確認したわけではありません。 でももしそうならなんと素晴らしいことでしょう。 インプラントで人の心も幸せに出来るとしたら… 私は歯科医であると同時に精神科医なのか?とうぬぼれています。 もちろん彼女にはオフレコです。 長文を最後までお読みいただきありがとうございました